尾道市の発展とともに
歩んできた上水道100周年

 明治時代尾道の市街地は、約70%以上が埋立地のため、地下水には塩分が多く含まれ、また市内には大きな河川もなく、上水道が創設されるまでは飲み水にも事欠くことがしばしばあり、街中には水売りの行商人が行き来していました。
 このような水事情のため、上水道創設は市民の切実な願いでした。
 そこで、市民の熱望に応えるため、上水道施設について具体的な計画を進め、大正11(1922)年3月に認可を受け、翌年1月から建設に着手し、大正14(1925)年4月に市民待望の上水道が完成し、給水を開始しました。
 その後も、市勢発展とともに増大する水需要に対応するため、市域外に水源を求めるなど13次にわたる拡張事業を行い現在に至ります。
 創設以来、本市の水道の歴史を振り返ると、まさに水との闘いでした。

浄土寺山より
(大正14年)

千光寺境内
(大正14年)

尾道港全景
(大正14年)

水道創設100周年を迎えて

尾道市長

平谷 祐宏

 尾道市の水道は、大正14(1925)年に久山田貯水池を水源として長江浄水場から給水を開始して以来、本年で100周年を迎えました。
 まず、本市の水道事業を回顧するにあたり、山口玄洞翁の功績を忘れることはできません。
 市内には大きな河川がなく、市街地の大部分は埋め立て地のため地下水には塩分が多く含まれており、水道が創設されるまでは飲み水にも事欠いていました。街中には水売りの商人が行き来していたと伝えられており、水道創設は市民の切実な願いでした。
 しかし、当時の財政事情は極めて厳しい状況で、なかなか実現できずにいたところ、この事情を察した本市出身で貴族院議員も務められた山口玄洞翁から創設費用の4分の3にも上る多額の寄付の申し出がありました。これにより一気に水道の建設に向けて前進し、市民待望の水道が誕生したのです。以来、尾道市民は常に清浄な水の恩恵を受けられるようになりました。
 全国各地に水道が創設されていますが、このように一個人による寄付を元手に誕生した水道は他に例を見ないものであり、更には、自らの努力により築き上げた財産の多くを学校や病院などの公共事業への寄付や数々の寺院への寄進に投じられたことは、玄洞翁の大きな功績の一つとして、私達は語り継いでいかなければなりません。
 その後、市政発展とともに増大する水需要に対応するため、13次にわたる拡張事業を行い現在に至っています。この間、記憶の新しいところでは、平成6(1994)年の異常渇水、平成30(2018)年の西日本豪雨による二週間に及ぶ断水など、幾多の苦難を乗り越えてまいりました。近代水道の創設と発展に携わった先人たちの不断の努力に深く敬意を表するとともに、関係各位のご支援に、心より深く御礼申し上げます。
 水道は豊かな市民生活、経済活動に欠かすことのできない重要な社会基盤です。ここに、本市水道事業が100周年を迎えるにあたり、ご協力とご支援を賜りました市民の皆様や多くの関係者の皆様に深く感謝申し上げますとともに、今後とも本市水道事業の発展のため、より一層のご理解を賜りますようお願い申し上げます。

水道創設
100周年にあたって

尾道市上下水道事業管理者

槙山 博之

 尾道市の水道は、大正14(1925)年に給水を開始し、本年で100周年を迎えました。
 給水を開始した当初は、給水人口37,000人、一日最大配水量4,500㎥でしたが、令和5(2023)年度末では給水人口118,980人、一日最大配水量41,095㎥に達しています。
 ここに至るまで、戦後の急激な人口増加や経済成長に伴い13次にわたる拡張事業を重ね、給水区域を拡張してきており、今日まで安全・安心な水道水を提供し続けることができましたのは、先人の方々の叡智と不断の努力並びに市民の皆様をはじめ関係各位の皆様のご支援のお陰であると心から感謝を申し上げます。
 昨今の水道事業を取り巻く環境は、人口の減少や節水意識の定着による水需要の減少によって給水収益が減少傾向にある一方、老朽施設の増加による更新需要や今後予想される大規模災害への対策に多額の投資を必要としており、大変厳しい状況にあります。
 私共水道事業者は、このような厳しい状況にあっても、市民生活や経済活動に不可欠である水道を守り続け、水道の恩恵を次世代に継承していかなければなりません。
 そのため、本市では令和3(2021)年度に「尾道市上下水道事業ビジョン」を策定し、「市民の皆様と共に歩む上下水道」を基本理念として、将来にわたって持続可能な上下水道事業を目指して日々努力しているところです。蛇口から直接飲める安全でおいしい水を安定的に供給し続けられるよう、全力を尽くしてまいります。
 水道事業は、かつての「拡張の時代」から、維持管理を中心とした「更新・基盤強化の時代」に入っています。100年経った今、水道事業を託されている者として、これまでの100年間に培われてきた歴史・経験・技術を維持・継承し、これからの100年に向けて新たな決意をもって取り組んでまいります。今後とも本市水道事業に対し、一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。

100周年記念特別事業
logo

100周年記念ロゴマーク

制作者

尾道市立大学 松﨑 菜月さん

 漢字の百を使った口ゴです。
 尾道は歴史ある街で、今でも懐かしい街並みが残っています。そんな尾道には漢字が似合うのではないかと思い、漢字の百を使った口ゴを制作しました。
 水の有機的な形を取り入れて「百」を作りました。「百」のまわりを多数の小さな丸で囲み、雫のような形に仕上げました。

水道局の取組み
100周年記念特別事業

尾道市水道記念館

歴史を学ぶことで
未来へつなげていく

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 尾道市水道記念館は、本市の水道の歴史や特徴を紹介し、水の循環や水道事業への興味と理解を深めることにより、水道が市民生活に不可欠なインフラであることを再認識することで、次世代の未来へつなげていこうとする施設です。
 記念館内には、小学生でも楽しく学ぶことができる「プロジェクションマッピングによるジオラマ」や、「パノラマシアター」など視覚的に楽しめる展示物、体験を通して学べる「止水体験テーブル」「水道クイズ」があります。また、尾道市水道の歴史や水に関する情報を分かりやすく紹介しています。

  • ジオラマ

    100年水道マップ

    地形を模した立体白地図のジオラマにプロジェクションマッピングで水の流れを投影し紹介していきます。雨→久山田貯水池(水源)→水道水→家屋→下水処理→海→蒸発→雨の循環を表現しています。その中で、水道水をつくるしくみをピックアップしています。

  • パノラマシアター

    尾道の水道創設を支えた
    山口玄洞翁の物語

    ダイナミックな曲面を採用したパノラマスクリーンによるミニシアターでは、創設の恩人「山口玄洞翁」をテーマにしたアニメーションを放映します。山口玄洞翁が一体どんな人物であったのか、その生涯を紹介します。

    • 壁面で水道の歴史や
      仕組みを紹介

    • 尾道市水道物語
      (山口玄洞翁と100年の歴史)

      尾道市の水道創設に尽力したことで尾道市の名誉市民にも選ばれている山口玄洞翁の功績と、その後の13次に渡る拡張事業など、尾道市の水道事業の発展と100年の歴史について紹介しています。

    • 尾道市の水道水の流れと
      水の循環

      水源の水を水道水にする仕組みを緩速ろ過池の断面模型を用いながら紹介しています。尾道市内の水がどこからきているのかを地図を用いて分かりやすく紹介しています。

    • 水道管の進化

      水道管の材質や継手の進化を年表にまとめ紹介しています。また、日本で初めて鋳鉄製の水道管をつくり水道の発展に大きく貢献され、尾道市の名誉市民にも選ばれている久保田権四郎氏についても紹介しています。最新の耐震管のカットモデルも実物展示しています。

    • 自然災害に対する
      水道の取り組み

      災害時の水道施設への被害を最小限に抑えるための施設整備や、被害を受けた時に適切な応急処置と迅速な復旧を行う協力体制について紹介しています。

    • いつも安心・安全な水道水を
      お届けするために

      水に関する豆知識などを紹介しています。

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  • 止水体験テーブル

    テーブル上に水道管と蛇口、止水バルブを設置し、水の代わりに空気を流して水道と漏水を疑似的に再現しています。止水バルブを開け閉めすることで、水道管の止水作業が疑似体験できます。止水の条件を設定した課題を用意していますので、ぜひチャレンジしてみてください。

  • チャレンジ水道クイズ

    水のことをどれだけ知っているかタッチパネルを使って3択クイズに挑戦できます。クイズ用タッチパネルは6台ご用意しています。

  • 記念館内に実物の
    給水車を展示

    尾道市上下水道局では給水車「300号」1台を備えていましたが、能力増強のため、2019年(令和元年)に「302号」を配備し、2台で給水活動が行えるようになりました。そのうちの「302号」を展示しています。

記念館について

開館 / 午前9時 ~ 午後4時
休館日 / 年末年始(12/29 〜1/3)
入館料 / 無料

お問い合わせ先
  尾道市上下水道局経営総務課
  TEL:0848-37-8700

※ 只今、開館準備中です。
5/25(日)14時から
一般公開を開始します。

水道局の取組み

100周年を記念して、オリジナルペーパークラフトを作成しました。カラー版と、塗り絵も楽しめる白黒版の2種類があります。PDFデータをダウンロードして、印刷して是非作成してみてください。パーツ切り、組立作業を含めて 10 歳のお子様がゆっくり工作した場合、以下が目安になります。
【給水車】2 ~ 3 時間 【応急給水隊員】15 ~ 20 分【基地】2 ~ 3 時間

100周年を記念して、歴史を振り返る映像と
局員の仕事やスポーツとコラボしたPR映像を作成しました。

100周年記念特別事業
  • 「Keep the Flow」世界チャンピオンの圧倒的パフォーマンス! フリースケート世界チャンピオン「山根優希選手」が尾道市上下水道局の100周年記念動画に登場!

100年のあゆみ
尾道市上下水道これからの展望

新たな100年に向けて

 本市では平成30(2018)年度まで、水道事業は公営企業の水道局、下水道事業は市長部局の都市部下水道課が担っていましたが、令和元年度から下水道事業も地方公営企業法を適用するのに合わせ両者を組織統合し、新たに尾道市上下水道局が誕生しました。

尾道市上下水道事業ビジョン

安全・安心な
まちを支える
上下水道

 上下水道は、快適な生活を支える社会基盤です。いつやってくるか分からない地震などの災害に強くなければなりません。本市では、いつでも、どんなときでも安心して飲むことのできる水道水を安定してお届けするとともに、汚水処理を適切に行っていくため、
・災害時の上下水道施設への被害を最小限に抑えるための施設整備を進めておくこと
・災害発生に伴い上下水道施設が被害を受けた場合にも、適切な応急措置と迅速な復旧が行える体制を整えておくこと
が必要であると考え、様々な対策に取り組んでいます。

尾道市上下水道これからの展望
尾道市上下水道これからの展望

 尾道市の水道水は、久山田貯水池を水源としている長江浄水場と、三原市の沼田川を水源としている坊士浄水場と宮浦浄水場の、3つの浄水場で作られています。3つの浄水場ごとに水の流れを色分けして示しています。
 そのうち坊士浄水場と宮浦浄水場は広島県の施設で、そこから配られている水は広島県から購入しています。